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では、TSの対象について以下にまとめてみよう。TSの対象は基本的に他のものすべてであるが、それらは以下の四つに分けて考えることができる。
・第一 社員およびその家族
・第二 顧客および準顧客(顧客の周りの人々)・第三地域社会(企業活動の基盤たる)
・第四 日本、世界、地球、人類
TSでは社員・スタッフおよびその家族が第一の対象者である。この第一の対象者が「幸せ」でなければ、第二、第三、第四の対象者に価値・感動を提供することはできないと考える。もちろん、ここで言う社員・スタッフの「幸せ」とは安楽に生きることではなく、充実した日々を送ることである。
企業が社会に貢献する明確なビジョンとポリシーを持ち、社員・スタッフ一人ひとりは企業のビジョンの共感者として、その達成に向けて働くことで日々充実感を味わうことができるようになる。そして、自分が努力をしたことで他人を感動させ、感謝されることで、自分自身が最も大きな感動を得ることができる。誰にも迷惑をかけることがなく、すべての人々から感謝されることは、仕事に対するモティベーションを極限にまで高めるだろう。
それは一人ひとりが自立型の姿勢で物事に取り組むことであり、相互支援型の組織である。
さらに企業が社会に貢献するほどその存在価値は高くなり、社員・スタッフだけではなく、その家族までもその企業で働いていることを誇りに思うことができるようになる。
第二の対象者は顧客およぴ準顧客である。顧客に対するTSとは顧客を感動させ続けることである。そして感動させ続けるためには、常に顧客の想像を超えた商品・サービスを提供することが必要となり、常に改善向上していくことが求められる。
そしてここで特にたいせつなことは準顧客、つまり顧客の周りの人々に対するTSである。目の前にいる顧客以上に、その顧客の周りの人々にも価値と感動を提供することである。
たとえばアパート建築を事業とする工務店では、これまで顧客は土地を有効活用したいと思っている土地所有者と思われてきた。だからこそ工務店は、土地所有者が喜ぶような建築物の提案をした。しかし本当に所有者が喜ぶのは、アパートであればいつでも入居者がいっぱい、つまり入居率が100%になることである。であれば本当に喜んでいただくべきはアパートの入居者であり、アパートの入居者が喜べぱ、入居率は限りなく100%に近づいて土地所有者も喜ぶことになる。このように、アパート建築では、準顧客である入居者にいかに喜んでもらえるのかが重要となる。
顧客の周りにいる準顧客にいかに価値・感動を提供していくかはとてもたいせつなテーマである。直接の顧客以上にその周りの間接的な人々に価値・感動を提供していく努力を借しんではならない。
第三は企業の活動基盤たる地域社会に対するTSである。企業活動が直接的であれ、間接的であれ、地域社会に貢献するものでなければならない。そのためにも、企業活動の目的であるビジョンと、企業活動の基本行動原則であるポリシーを明確にして企業活動を行うことが求められる。
さらに積極的に企業の利益の一部を地域社会に還元したり、企業活動の一つとして地域のボランティア活動を社員・スタッフで行うと言ったことも検討すべきである。安全、平和などに企業活動が貢献してもよいだろう。たとえば道路工事をしながら地域の防犯や一人住まいのお年寄りへの見回りなどもできるはずである。企業活動の拠点である地域から尊敬されるような会社であってこそ、一流本物の企業である。
第四に日本、世界、地球、人類にとって、企業活動が価値あるものでなければならない。
消費する社会から、活用、循環する社会へと企業の社会への関わり方は大きく変化してきている。地球環境にわずかでも有害なものを排出する可能性のあるものは極力生産しないようにするべきである。やむをえず生産する場合には、その回収を100%できるシステムを作り上げてから生産しなければならない。つまり、ゴミにするのではなく資源として再利用する。
また、時間とともに価値を増すモノをつくる。企業活動が単に生活を維持するためのものではなく、人類の文化を継承、創造していくことができれば素晴らしいことである。
この第四の対象は人類がこれから最も知恵を出していかなければならない重要な対象である。
TSとは一言でいえば、他のすべての存在に対して貢献することである。すべての人々を幸せにすることができれば企業社会は健全に発展していくはずであり、そうではなく自社の利益だけを追求するのであるならば、企業社会は崩壊していかざるを得ないからだ。 |